S女：ワルプルギスナイト

　二日目。朝起きたら女王様は既に出かける支度をしていた。
「カオルさん、今からちょっと弁護士の先生の所へ行ってくるわね。」
金持ちと言うのは財産管理の為に色々と煩わしいことをしないと
行けないらしい。
　女王様が出て行ったので素っ裸で神棚を拭いたり、掃除機をかけたり、
塩をまいたりと色々と掃除しておく。出て行く際に女王様が
「多分大丈夫だと思うんだけど…この家霊がいるから…。気に喰わない人は
絶対にこの家の敷居をまたげないんだけど、カオルさんは昨夜から
すんなりここで寝てるから大丈夫だと思うんだけど…若い男の霊よ
それから可愛がってたポメラニアンもいるわ。」と言う言葉が気になったが
素っ裸とは言えこれだけ掃除しとけば祟られることは無いだろうと
勝手に女王様の冷蔵庫から蕎麦をくすねて遅い目の朝食兼昼食を食べて昼寝
　あの美人の女王様の家に居着く若い男の霊が不細工なはずが無い。寝込みを
襲われても大丈夫なように、しっかり洗って全裸で昼寝。神棚で女王様の
おじいさまとおばあさまの写真と目が合うが、気にしない気にしない。

　ワクワクしながら寝てみるが、やたらと耳元でゲップされる。
そのまま寝入った所で携帯が鳴る気が付くともう夜の9時
　女王様からだった。今近所の駅に居るから食事をしようとのこと。
そう言うわけで駅まで歩く。途中、道に迷って2回男性に道を尋ねたが
どちらの男性も超丁寧に優しく教えてくれた。あああ、神戸の男って
大阪より素敵

　駅まで行くと女王様が本屋でエリザベス女王とメアリー女王の対立に
関する歴史書を立ち読みしていた。やはり私みたいに「ナニワ金融道」に
飛びついている俗物ではない、正真正銘の女王様だと思い知らされた。

　女王様の行きつけのダイニングバーへ。そこの美人マダムと先客の
３０代のリーマンに真面目で何の落ち度も無いような人の仮面を
剥ぎ落としてやるようなことをチョロチョロとジャブで咬まして
様子を見ながらパスタを食べる。キチンとしたリーマンがブレブレに
なる顔は本当に堪らない。それだけで飯３杯イケル。

　この日は深夜までここのダイニングバーで真面目に慎み深く生きている
マダムに悪いことを焚き付けてお開き。リーマンは持ち帰れず。チッ。

　家に戻る途中に女王様に耳元でゲップされた話をすると
「それ、ポメラニアンの霊よ。あの部屋、あのコのお気に入りでね。
ゲップの他にオナラもする子だったわ…。」

　犬の霊に屁をかまされていたのか…道理で今日はリーマンを
落とせないわけだ。　　　　　　　　　　　　　　つづく